今回紹介する本は「AIとBIはいかに人間を変えるのか」
著者の波頭 亮さんは、経営コンサルタント、経済評論家であり、経営コンサルティング会社の社長です。
AI(=人工知能)という言葉は最近とても耳にすることが増えました。
また、BI(=ベーシックインカム)はAIほどではありませんがこの言葉も耳することが増えたように思えます。
ベーシックインカムとは、政府が国民に最低限の生活をするのに必要なお金を支給するという政策です。
この本にはAIとBIがこれからの世の中をどう変えるか、著者が分析して予想したことが記されています。
AI(=人工知能)が私たちの暮らしを便利にする反面、仕事がなくなってしまうのではないか。と心配している人もいるのではないでしょうか。
BI(=ベーシックインカム)やるにしてもそんなお金どこにあるの? 財源はどうするんだと疑問を持つ人もいるでしょう。
このような問題に対しての答えが、この本には著者の分析・予測として書かれています。
これからやってくるAI革命、そしてBIの実現について知りたいかたは一読するのもいいと思います。
AIが人間の能力を超える
人間の知能を遥かに超えたコンピューターが、人類を支配しようとしたり滅ぼそうとしたりする。
映画や小説の中でよく目にするストーリーですが、実際本当にそのような未来がやってくるのではないかと心配している人もいると思います。
しかし著者は、近い未来にAIがあらゆる意味で人間の知能を超えられるとは考えていません。
すべての仕事がAIにとって変わられてしまうということもありえないと書いています。
人間ではなしえなかったことをAIが実現できるようになる可能性は十分に考えられる一方で、人間でなければ成し得ないことも依然として多々続いていくと考えられる。
AIと違って人間には知能だけでなく心や感情、そして身体があります。
心と身体はつながっていて、つながっているからこそ理解できるということもたくさんあります。
AIに仕事が奪われる!?
AIによって人間の仕事の目が奪われてしまい、失業者が大量に出てしまうのではないかという心配があります。
大勢の人間が失業してしまい、収入を得られなくなってしまうのではないか、そして自分もその1人になってしまうのではないかと言う不安を感じている方も多いでしょう。
少なくとも当面の数十年間は、こうした問題を深刻に心配しなければならないほど、AIは万能にならないと考えてよいだろう。
AIにも得意なことと不得意な事があり、不得意とする部分に人間でなければできない仕事が残されます。
本書ではAIの強みと弱みについてかなり詳しく説明されています。
AIはどんな分野で力を発揮し、どんな分野を苦手とするのか。
今、私たちがAIに対して抱いている漠然とした不安はこれを知ることによってかなり小さくなるのではないでしょうか。
BI(=ベーシックインカム)とは
ベーシックインカムとは、最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策。 (ウィキペディアより)
つまり、ベーシックインカムとは、とてもざっくり言うと、最低限の生活をするのに必要なお金を政府が全国民に支給するという制度です。
ベーシックインカムにはお金を受け取るための条件がありません。
その国の国民であれば、年齢、性別、疾病の有無に関係なく死ぬまでもらえます。
しかも、全国民に同じ額が給付されるのです。
働いても、働かなくても同じ額がもらうことができます。
働き始めたからといって、給付が終了したりはしません。
BI実施下では、働きたくなければ働かなくてもいいし、働きたければ働いていいのです。
仕事をしても、しなくても同じ額がもらえるので、仕事に対する考え方からライフスタイルまで現在とは違ったものになっていくでしょう。
私個人としては、ぜひ実施してほしいですね。
どんな世の中になるか見てみたいです。
BIの財源の問題
BI(=ベーシックインカム)を実施するにあたって、どうしても心配なのが財源の問題です。
全国民に一律でそれなりの金額を支給するのですから、かなりの財源が必要になります。
ベーシックインカムを実施すれば、生活保護や失業保険など廃止しても良い制度があります。
それらをベーシックインカムの財源に回すとしてもまだまだ足りません。
何しろ全国民が対象なわけですからね。
私としてはかなり厳しいと思います。
本書で著者は「財源の確保は可能である」と言う立場をとっており、その試算の内訳もざっくりとではありますが紹介されています。
私のように、「ベーシックインカムは実施して欲しいけど、財源の確保はかなり厳しいだろうなぁ」と考えている人間にとっては、希望が持てますね。
どんな未来が訪れるのか
AIの発達によって人間が生産活動に関与する余地がなくなり仕事を失う事は、仕事による所得を失うことにつながる。AIに仕事を奪われ、大多数の人が所得を失うことになれば、当然ながらものを買ったり、医療や介護のサービスを受けたりするためのお金に困ることになる。
AIが高度に発達して、物を生産したり、サービスを提供したりするようになれば、人間がやる仕事が極端に少なくなってしまいます。
今まで人間が担っていた生産活動、つまり仕事がAIに奪われてしまうのです。
働くことができなくなってしまえば、収入がなくなり、ものを買うことができなくなってしまいます。
AIによってあらゆるものが効率よく生産されても、人間の側にそれを消費する経済力がなくなってしまうのです。
モノがたくさんあってもお金がなくて買えない状態です。
消費が衰えてしまえば、経済全体が衰退してしまいます。
そこで登場するのが、BI(=ベーシックインカム)と言うわけです。
働かなくても食ってよし
AIが高度に発達し、ものを生産し、サービスを提供するようになると人間のそれまで担っていた「生産者」という役割がなくなってしまい、「消費者」と言う役割だけが残されます。
AIはモノを生産できても消費はしないので、モノを買って消費するという行為は人間が担当するのです。
そしてその人間が行う消費を経済的に支えるのがBI(=ベーシックインカム)なのです。
これはつまり「働かざるもの食うべからず」ではなく「働かなくても食ってよし」の世の中になることを意味します。
現在の常識ではとても考えられないことですね。
そんな未来が本当にやってくるのか、私はにわかには信じることができませんが、著者はこのような世の中になると予測しています。
私はそうなってほしいし、そうなった世界を見てみたいです。
そしてさらに、「働かなくても食ってよし」の世の中で人間が直面するであろう問題についても触れて、著者が解決法を提示しています。
AIとベーシックインカムが実施された世界で、人間の役割は消費だけになってしまいます。
しかし人間はただただ消費するだけでは生きていけないと言うのです。
人類の歴史上、最大の変化を作り出すAI、そしてその時、経済の維持に不可欠なベーシックインカム。
この本を読むと、そんな不安と期待が入り混じった未来を一足早く覗いた気になります。
まとめ:AIとBIはいかに人間を変えるのか
本書は大きく分けて3つの章に分かれています。第一章がAI、第二章がベーシックインカム、そして第三章がAIとベーシックインカムが同時に存在する世の中についての考察となっています。
また、これからの訪れる世界についてだけではなく、人工知能の歴史や世界各地で行われたベーシックインカムの導入実験など、AIとBIの過去についてもまとめられているので体系的に学ぶことができます。
未来の予想だけを早く知りたいかたは、これらのパートは思い切って飛ばしてしまうのもありだと思います。
とにかく、これから訪れるAI革命について知りたい方、とくに仕事や生活の変化について不安を感じているかたは、一読してAIやBIへの理解を深めてることをお勧めします。